インキュベクスの上村です。

私はこの9年、ケアーズブランドで全国に900社弱の訪問看護ステーションづくりを行ってきました。

看護師さんの採用数は5000名をくだりませんし、ご利用者様の数はおおよそ10万人くらいの規模にはなっているかと思います。

そんな経験から、在宅看護のこと、看護師のこと、訪問看護立ち上げのことなど、最近感じている傾向をご紹介いたします。

ご利用者様100~300名のステーションはM&Aができる(売れる・買える)

足掛け9年、900社ほどの訪問看護ステーション立ち上げ支援を行ってきましたが、ここにきてある程度の規模感のあるお客様の中には、大事に育ててきた会社のM&Aを決意する方も少なくありません。

ちなみに、ある程度の規模感とは、ご利用者様の数が100名から300名前後ほどのステーションというイメージです。

社員数30名前後の訪問看護ステーションが、M&Aできる

私たちのパートナー様の中で会社を高く売れる規模感は、社員数でいえばだいたい30名前後の拠点です。それくらいの規模だと月商は2000万円前後でしょうか。

営業利益は、上手な経営ができているところでおおよそ20%程度。

つまり、訪問看護業務に従事する社員(看護師、理学療法士)が30名前後、ご利用者様の数が300名前後の場合、おおよそ年商2億円レベル。肝心な営業利益は年間4000万円ほどかと思います。

ではそのステーションの売却価格はどれくらいかというと、目安はおおよそ1.6億円(交渉相手によっては2億円まで提示してくれる方もいらっしゃいます)。

この売却価格の根拠は、営業利益の4年分。今まで見てきた売却事例の8割方は、この目安の金額でM&A(事業譲渡)が成立しているのです。

月商2000万円前後のステーションは何年でつくれる?

ここではあくまでも民間企業が投下資金3000~4000万円ほどで訪問看護ステーションを開業する場合の事例です。
(看護師さん同士で小さく起業するケースではありません)

民間企業による立ち上げの場合、関東圏における事業成長スピードは、早ければ2年ほどで、売却対象(社員30名、ご利用者様300名)に到達するケースがあります。

2年で月商2000万円レベルに成長させるには、かなり慣れたスタッフと採用・請求に長けたバックオフィスが必要になりますので、初めてのチャレンジの場合は業務着手から36カ月後を目標にするのが安全かもしれません。

ちなみに看護師独立の場合は少し速度が変わります。

例えば、看護師さんによる手元資金500万円での企業の場合、ご利用者様に増加に合わせた看護師採用が難しいので、売却対象レベルになるまでには10年近くかかるのが一般的でしょう。

M&A対象となるような訪問看護ステーションはどこでつくるのか?

僕がこの9年、ケアーズブランドで全国に900社弱の訪問看護ステーションづくりを行ってきましたが、M&Aの対象となる訪問看護ステーションは原則として関東圏(都内、神奈川県、千葉県、埼玉県)、そして大阪や、名古屋といってエリアとなります。

それ以外の事例はなくはないですが・・・営業利益の4~5倍というレベルではなく正直、もったいないなという価格での売却となっています。

訪問看護ステーションは「買う」か「つくる」か?

訪問看護ステーションのM&Aについては数多くの問い合わせをいただきます。

そんな中でよくあるのは「訪問看護ステーションを買う」のがいいか?

それとも「売ることを計画した上で1から創業するのはどうか」、というご質問です。

答えは、訪問看護ステーションを買う場合のデメリットがあるとすれば・・・という話にも関わってきます。

訪問看護ステーションを購入する方々はほとんどの場合、購入価格である2億円前後を現金で決済するケースがほとんどです。

つまり交渉から合意までにかかる時間は早ければ1カ月。

その後、現金が動きます。

訪問看護ステーションのM&Aの場合、対象会社を買うために融資を利用する時間はさほどありません。

他の業種を購入する場合は融資利用等が考えられますが、訪問看護ステーションのM&Aはきわめてスピーディに商談が行われますので、そこに疑問を感じられる方は、1から訪問看護ステーションを開業されることをおすすめしています。

訪問看護ステーションのM&Aのブームはいつまで続くのか?

訪問看護ステーションのM&Aは、高齢化ピークである2040年より前・・・だいたい5年前までに実践するのが望ましいでしょう。

M&Aは一度だけでなく、地域を変えた上で何度も何度も繰り返し挑戦するのはアリだと思います。

売却したお金で違う地域にステーションを作り、会社を成長させたらまたM&Aにトライする、ということです。


上村 隆幸(かみむら たかゆき)

1965年神奈川県生まれ。1998年、起業コンサルタント業を開始し、以来3000社を超える起業支援を手がける。日本の医療のが在宅シフトにともない「子供からお年寄りまで」すべての生活者が安心と幸福を実感できる地域社会づくりに向けて「ケアーズ訪問看護ステーション開業運営支援」を開始し現在全国800社以上をネットワーク。また「介護の王国」では食費を含めた¥95.000を関東圏で実現する。こちらは全国70拠店。

2021年より神奈川県南足柄市で農業生活をスタート。生産者の視点で「農のある暮らし」「農のある医療」「農のある介護施設」づくりを推進している。

青山学院大学 大学院 国際マネジメント研究科 MBA
産業技術大学院大学(AIIT)創造技術専攻 事業アーキテクチャ(修士)
国際医療福祉大学大学院 保健医療学 博士課程(中退)
新極真空手 木元道場所属 初段