訪問看護事業の成長には、原因を分析し、改善を繰り返すことが重要です。

インキュベクスの青井です。
皆様は、訪問看護という事業について、どのようにお考えでしょうか?
医療・福祉の1つであり、その存在意義や役割については様々な考え方が成り立ちますが、事業である以上は、人間の営む経済活動の1つと言えます。
経済活動が難しそうに聞こえるという方は、“商売活動”と考えてみて下さい。
“商売活動”とは言うものの、単純なモノの売り買いではありませんし、だからこそ、ただ売ろうとするだけでは、利用者を増やすことも売上を伸ばすことも難しくなります。
こうした難しさや、一般的な“商売活動”との違いから、訪問看護という事業への不安を感じる経営者様も多いようです。
そこで今回は、難しさ、不安となる原因を探り、整理することで、それらの解消を目指してみたいと思います。
「訪問看護の利用者が増えない」というお悩みがある場合は…

例えば、「利用者がすぐには増えない」というお悩みがあるとします。
その原因は何か? というように、日々の活動を客観的に分析することで、対応策を見出すことができ、不安を取り除くことができます。
ステーションをよりよく運営するためにも、ぜひ、嘆く前に日々の営業活動を客観的に分析する習慣をつけましょう。
では、実際に「利用者がすぐには増えない」理由を考えてみます。
「なぜ、利用者が増えないのか?」は、「なぜ、そのステーションを使いたくないのか?」」
まず、なぜ、利用者が増えないのか?、つまり、利用者の目線で言えば、「なぜ、そのステーションを使いたくないのか?」その“理由”を調べることが必要です。
購買者・利用者が、サービスを“使わない理由”のうち、
代表的なものを分類すると次のようになります。
(1)提供するモノ・サービスに対する知識不足・理解不足
(2)提供するモノ・サービスに対する必要性・緊急性の不足
(3)提供するモノ・サービスに対する資金不足
(4)提供するモノ・サービスが時代遅れ
(5)提供するモノ・サービスが競合よりも劣る
(6)提供する側の信用不足
(7)提供する側・購買側の政治的理由等(人の好き嫌いなど)
(8)決裁権限者のエゴ(好き嫌いなど)
(9)売ること・買うことを考えるのに疲れて、諦める。
訪問看護の場合、おそらく上述の(1)、(2)、(6)が有力な“理由”であり、それ以外は当てはまりにくいと思われます。
では、それぞれの“使わない理由”とその対処法を詳しく見てみましょう。
(1)提供するモノ・サービスに対する知識不足・理解不足の場合は…

まず、(1)のケースですが、訪問看護は利用者や、それだけでなくケアマネなど関係者の知識不足がまだまだ多いサービスです。
その中で、わかりやすく説明できる・相談できるステーションとなったならば、多くの利用者に受け入れられるチャンスとなるでしょう。
相手の知識量がどのくらいかを常に意識し、それを補い、信頼を得るために必要な資料や接し方を、日々の活動の中で常に考えることが重要となります。
(2)提供するモノ・サービスに対する必要性・緊急性の不足の場合は…

(2)のケースでは、(1)の状況から派生した場合が多く、ケアマネや病院などの知識不足により、「本当は必要性・緊急性があるにもかかわらず、理解していない」ということがあります。
そのため、対処としても(1)と併せたものが理想であり、利用者にとっての必要性をわかりやすく説明していく必要があります。
(6)提供する側の信用不足の場合は…
(6)のケースは、新規参入には付き物の、避けられない要因です。
まずは、事業者の概要、スタッフのスキルや個性などを焦らずにアピールしていきましょう。
また、一人一人の利用者を大事に扱うことも、信用を高めるためには有効です。
地域によっては(7)のケースが発生することもあります。○○法人の○○会系が強いといったような、派閥であったり、有力者が存在する場合です。
ケアマネなどが「誰からの紹介ですか?」と聞いてくる、派閥や有力者との関係の有無を確認してくるといった場合には、注意が必要です。
こういったケースでも、まずは挨拶から始めるのは同じですので、厄介ですが、毛嫌いせず、面倒くさがらず、その有力者とのコミュニケーションを開始しましょう。
どのような連携が可能かを模索しながら、前向きな取り組みにつなげることが重要です。
『建設的に考え・話し合い、行動を決めて、やってみて、ダメなら修正するといった繰り返し』が必要

このように、利用者の“使わない理由”を分析することで、最終的に多くの利用者確保に至った、次のような事例があります。
あるステーションでは、営業活動をしても利用者がなかなか増えず、その背景には「介護が必要になったら、施設に入るもの」という地域住民の意識がありました。
ステーションの看護師・療法士は、利用者が集まらない原因究明を重ねていたようですが、「ここは○○だからダメなんだ」「ケアマネが○○だからダメなんだ」と他人のせいにばかりして、なかなか改善できなかったそうです。
最終的に、一人の利用者の獲得をきっかけにケアマネと交流が深まり、ケアマネの連絡協議会へ挨拶に行ったことで、相談が増え始め、徐々に利用者の確保が進んだと言います。
この事例から言えるのは、ダメな原因を分析するだけではなく、『建設的に考え・話し合い、行動を決めて、やってみて、ダメなら修正するといった繰り返し』が必要だということです。
ダメな原因を探り、原因を指摘するだけでは何も解決しません。
こうした改善の『繰り返し』は、地道な取り組みになりますが、どんな事業(商売)活動でも必要なことです。
訪問看護は、まだまだ参入企業が多くなく、事業に不慣れな方が比較的多い業界ですが、決して特殊な事業ではありません。
『繰り返し』実行することで訪問看護事業も大きく成長します

スタッフ全員が前向きな考え・コミュニケーションを持ち、改善を『繰り返し』実行することで、他の事業同様、訪問看護事業も大きく成長します。
細かいことですが、営業日報を書いていないステーションは、客観的な事実を文書化していないことで分析ができず、改善の『繰り返し』ができないケースがほとんどです。
フォーマットは簡単なもので良いので、スタッフ全員が毎日、営業日報を記入する習慣を付けましょう。
経営者・管理者の重要な役割の1つは、スタッフが改善の『繰り返し』を継続できるよう、環境を整えることにありますので、ぜひ、実践してみて下さい。