今日は、とある方から頂いたメールについてお話ししたいと思います。
その内容は非常に率直で、こういったものでした。

「65歳で定年を迎えました。退職金などでまとまった資金があります。訪問看護ステーションの運営は私でもできますか?」

こちらの内容、今回も元インキュベクス代表取締役(現:円仁会代表)の上村(かみむら)さんにお話しいただいております。
こちらの動画はYouTubeでも配信しておりますので是非ご覧ください。

このようなご相談、実はこれまでも何度かいただいたことがありました。
先に言ってしまうと、私の答えは——「やらない方がいいと思います」です。

65歳からの起業は「出会い」が鍵…でも甘く見てはいけない

仮に、65歳のあなたが、素晴らしい看護師さんと出会えたとしましょう。
そして「この人に任せれば安心だ」と思えるような信頼感があるとします。

しかし、それだけで訪問看護ステーションの運営がうまくいくとは私は思いません。 なぜなら、訪問看護ステーションという事業は、看護師さんに丸投げして成功するビジネスではないからです。

看護師さんはプロだが、経営のプロではない

もちろん、看護師さんは医療や接遇のプロフェッショナルです。
しかし「経営」という観点では、多くの方が経験も訓練も積んでいないのが実情です。

たとえば、こんなことができるかが問われます。

  • 売上をどう伸ばしていくのか
  • 経費をどのように抑えるのか
  • 成長に合わせてスタッフをどう配置していくのか
  • 管理者や看護師の退職時の綿密な対応策

実際に、ある日突然「私、もう辞めます」という看護師さんや、時には管理者自身から言われたりすることも少なくありません。
これは訪問看護業界では珍しくない出来事です。

「すべて任せます」で成功するのは難しい

どんな仕事でも起こるように、多くの場合、訪問看護の現場でも、日々さまざまな問題が起こります。
利用者さんとのトラブル、スタッフ間の連携ミス、突然の退職…。

こういった現場の対応を、65歳で悠々自適な生活を望む方が「信頼して任せます」というスタンスで乗り越えられるでしょうか? 率直に申し上げて、それはかなり難しいと思います。

数百万〜数千万円の損失リスクも

訪問看護ステーションの開業には、まとまった資金が必要です。
さらに、スタッフの退職や経営の失敗が続くと、1,000万〜4,000万円という損失が出ることもあります。

「老後の資金で起業」というのは夢があるように見えて、実際にはかなりリスキーな選択肢でもあるのです。

65歳からの人生、もっと楽しい選択肢もある

せっかく退職金があり、時間も自由に使える。
そんな中での第二の人生には、私はもっとのんびりとした豊かな暮らしをおすすめしたいです。

旅行に行ったり、趣味を楽しんだり、家族との時間を大切にしたりといった、現役時代にはできなかったことに時間を使う、ということを。 訪問看護ステーションの運営は、成長産業であり、やりがいも大きい分、それ相応にタフなビジネスでもあります。
ゆったりとした生き方を望む方には、正直向いていないのではと思うのです。

起業するなら、50代前半が限界か?

私個人の感覚では、訪問看護のような人材ビジネスで起業を考えるなら、50代前半が限界ラインだと思っています。
それ以上の年齢になると、体力・気力・リスク耐性、どれを取っても厳しくなってくるのが現実です。

ご自身の未来を考えるヒントに

もちろん、どうしてもやりたい、使命感があるという方を止めるつもりはありません。
ただ、今回のように「お金はある」「出会いがあった」という理由だけで始めるには、思っていたのと違った、想像していたよりリスクが大きい、と感じることになる可能性があるのが訪問看護ステーション経営なのです。

ぜひ慎重に、そして現実的にご判断いただければと思います。

最後に・・・円仁会とは?
円仁会は、インキュベクスやケイスラッシュ、医療関係施設など、複数の関連会社を統括するホールディングカンパニーです。今年 1月より私は円仁会の代表取締役に就任し、よりスムーズな運営を目指して、各関連事業所の代表職を信頼できる方々に委ねております。