今日は、訪問看護ステーションにおける「管理者が辞めたらどうしよう」という不安について、お話ししてみたいと思います。

民間経営者の方であれば、一度はこの悩みに直面したことがあるのではないでしょうか?
特に、訪問看護の現場では「管理者が辞める=事業所の危機」と考えてしまう方も多く、不安で夜も眠れないという方もいるかもしれません。

こちらの内容は、元インキュベクス代表取締役(現:円仁会代表)の上村(かみむら)さんにお話しいただいております。
YouTubeでも配信しておりますので是非ご覧ください。

実際に多くのステーションが悩んでいる「管理者問題」

私がこれまでに「ケアーズ」というブランドで開業支援してきた訪問看護ステーションはおよそ1000拠点。
その中で、8〜9割の事業所が「管理者問題」で悩まれていたという印象があります。

もちろん、私自身も例外ではありません。現在は4拠点目の経営を行っていますが、これまでに3〜4回、管理者が突然辞めるという場面に直面しました。

思い出深い「スーパー看護師」のケース

一番印象的だったのは、以前もお話しましたが、とても優秀で訪問件数も驚くほど多くこなす「スーパー看護師」タイプの管理者がいたときのこと。
ただし、その方はマネジメントがあまりに厳しく、チームの看護師さんたちがついていけず、ステーションが崩壊寸前になってしまったこともありました。
その方が退職し、またそれに続く人が辞めたり、という経験もしました。

しかし、今だからこそ言えるのは——
「管理者が辞めても、ステーションそのものが潰れたことは一度もない」ということです。

管理者が辞めたあとに起こる「予想外の出来事」

管理者が辞めたとき、経営者として次に感じる不安は、「みんな一緒に辞めてしまうのでは?」ということ。
しかし、実際にはそのような“集団退職”は一度も経験していません。

むしろ面白いのは、
そんなときに現れた、いつも控えめで目立たなかった看護師さんたちの声。

「管理者、私やってみてもいいですか?」

そんな小さいながらも助けにもなる声が、次の希望につながっていったのです。

依存体質を脱却することが経営の安定につながる

この経験から学んだのは、
管理者に依存していた体制そのものが問題だったのではないか」ということです。

たとえば、本当は意見がズレていることが明らかでも、
「辞められたら困るから」と譲歩してしまっていたこと、皆さんもあるのではないでしょうか?

そこで私は、依存しない体制を意識して構築しました。

「看護師=経営者」ではない体制づくり

訪問看護の現場では、サービスの提供や近隣医療機関との関係構築など、看護師さんにしかできないことが多いです。
ですが、訪問件数・稼働率・営業計画・教育計画などの経営管理は、事業責任者が担う体制にしています。

つまり、
「看護師としての管理者」と「経営を担う責任者」を分けること
これが、1人に依存しない経営の仕組みなのです。

管理者候補は「待つ」のではなく「育てる」

2025年4月現在、毎週、毎日、面接をしています。
1ヶ月で約20名の看護師さんと面接する中で、採用時点で管理者候補としての可能性を確認するようにしています。

  • 「将来的に◯◯エリアへの出展を計画していますが、管理者希望されますか?」
  • 「報酬体系はこのようになっていますが、ご意見ありますか?」
  • 「管理者育成の教育体制はこうですが、ご興味ありますか?」

こうした丁寧な確認を通じて、次の出展先の管理者候補・各拠点のサブ・リーダー格の育成計画を立てられるようになりました。

恐れずに採用を継続し、希望者の登場を待てる体制を

管理者が辞めることは決して怖いことではありません。
それ以上に大切なのは、普段からのスタッフとのコミュニケーションです。

「私、やってみたいです」と言ってくれる人が出てくる環境をつくる。
そのためには、恐れずに採用を継続し、明確なビジョンをスタッフと共有することがカギになると感じています。

いかがでしたでしょうか?
「管理者が辞めたらどうしよう…」と悩む経営者の方々にとって、
少しでも参考になることがあれば嬉しいです。

それではまた次回、別のテーマで!

最後に・・・円仁会とは?
円仁会は、インキュベクスやケイスラッシュ、医療関係施設など、複数の関連会社を統括するホールディングカンパニーです。今年 1月より私は円仁会の代表取締役に就任し、よりスムーズな運営を目指して、各関連事業所の代表職を信頼できる方々に委ねております。