
インキュベクス顧問の上村です。
「家から3分」という言葉が教えてくれたこと
「家から3分だから、ここが一番いい会社です」
先日、あるスタッフがそんな言葉を口にしました。
思わず苦笑いしました。もっと理由があるだろう、と突っ込みたくなるような言葉です。
でも、不思議なことに、その一言がずっと心に残っています。
なぜなら、それは私たちが大切にしてきた「地域と共に生きる」という理念を、あまりにも自然な形で言い表していたからです。
■ ケアは“遠くにあるもの”じゃない
訪問看護という仕事に関わって十数年、私は何度もこの仕事の本質について考えてきました。
そして、ひとつだけ揺るがない確信があります。
それは、「ケアは“遠くにあるもの”ではなく、“暮らしのすぐそば”にあるものだ」ということです。
私たちは、とかく専門性や医療的な価値に目を向けがちです。
それはもちろん大切なことですが、本当に支えが必要なとき、人が求めているのは「すぐそばにいてくれる存在」ではないでしょうか。
“家から3分”という距離は、まさにその象徴です。
それは、働く人にとっての安心であり、同時に、利用者さんやそのご家族にとっての「頼れる距離」でもあるのです。
■ 地域の中で“生きる”ということ
会社をつくり、事業所を出店していくとき、私がいつも自分に問いかける言葉があります。
「それは、地域の中で“生きて”いるか?」
単に“ある”のではなく、地域の暮らしの呼吸の中に“溶け込んで”いるか。
それが、私たちの事業の価値を決めるといっても過言ではありません。
だからこそ、今回の新羽への出店も、「地図上の点を増やすこと」ではなく、「暮らしのそばに、もう一つの灯をともすこと」だと考えています。
■ 一番大切なことは、意外な言葉の中にある
“家から3分”という言葉には、派手さも専門性もありません。
けれど、そのさりげなさの中に、私たちが大切にしてきた本質が詰まっています。
地域と共に生きるとは、難しい理念を掲げることではありません。
日々の暮らしの中で、人と人が自然に寄り添い、互いに安心して生きていける「場所」をつくっていくことです。
私たちの仕事は、その“3分”をつくることなのかもしれません。
「遠くに行かなくてもいい」「特別なところへ行かなくても支えがある」──そんな地域の未来を、一歩ずつ形にしていきたいと思います。