円仁会の上村です。

私はこれまで、1,000社を超える訪問看護ステーションの起業支援に携わってきました。

これから訪問看護を始めたいという方を支援し、採用、営業、利用者獲得、組織づくりなど、さまざまな課題を一緒に考えてきました。

その中でご相談を受けながら、強く考えるようになったことがあります。

「ステーションを1つ開業することを、ゴールにしていいのだろうか?」

ということです。

もちろん、最初の1拠点を立ち上げることは大切です。

看護師を採用する。

利用者を増やす。

地域のケアマネジャーや医療機関と関係をつくる。

そこには、たくさんの仕事があります。

しかし、本当に「経営」をするのであれば、その先があります。

最初の1拠点をつくる段階から、「成長すること」を前提に設計する。

私は、これが非常に大切だと考えています。

1拠点をつくることと、事業をつくることは違う

訪問看護ステーションは、1拠点でも十分に地域に必要とされる事業です。

まずは1拠点を安定させる。

それ自体は、決して間違った考え方ではありません。

しかし、訪問看護事業を経営するのであれば、経営者にはその先を考えてほしいと思っています。

  • 2拠点目をどうするのか。
  • 複数拠点になったとき、誰が管理するのか。
  • 10拠点になったとき、本部機能をどうするのか。

1拠点の経営と、10拠点の経営は、まったく違います。

採用の方法も変わります。

管理者の育成も必要になります。

営業も、個人の力量だけに頼り続けることはできません。

経理、労務、レセプト、教育、採用、DX。

拠点数が増えれば、経営課題は確実に複雑になります。

だからこそ、

最初の1拠点をつくる段階から、将来どのように成長していくのかを考えておく。

私は、それが重要だと思っています。

  • 開業して、黒字になってから考える。
  • 2拠点目を出すと決めてから考える。
  • 10拠点になってから本部を考える。

それでは、遅くなることがあります。

「この会社は、将来どこまで成長したいのか」

「そのとき、何を現場に残し、何を本部に集約するのか」

「拠点が増えたとき、利益率をどう高めていくのか」

そこまで考えたうえで、最初の1拠点をつくる。

これが、単に訪問看護ステーションを開業することと、事業をつくることの違いだと思います。

「拠点数×売上」だけでは、強い会社にならない

訪問看護事業を成長させようとすると、

拠点を増やす。

売上が増える。

社員数が増える。

会社が大きくなる。

という流れを思い描くと思います。

もちろん、それは間違いではありません。

しかし、拠点が増えれば、同時にコストも増えていきます。

管理者が必要になる。

事務スタッフが必要になる。

本部機能が必要になる。

採用コストもかかる。

経理や労務の業務も増える。

つまり、

売上が増えたからといって、会社が強くなるとは限りません。

  • 売上は増えた。
  • 社員数も増えた。
  • 拠点数も増えた。

それでも営業利益率は上がらない。

場合によっては、会社が大きくなったことで、以前より経営が難しくなることもあります。

単純に拠点を増やし、売上を積み上げるだけでは、本当に強い会社にはならないのです。

目指すべきは「売上が増えるほど会社が強くなる構造」

では、何を目指すべきなのか。

私は、

「売上が増えるほど、会社が強くなる構造」

をつくることだと考えています。

拠点を増やす。

売上が増える。

しかし、同じ割合でコストを増やさない。

共通化できる業務は、本部に集約する。

仕組みを標準化する。

システムを活用する。

同じ仕事を、拠点ごとに何度も繰り返さない。

そうすることで、

拠点が増える

売上が増える

共通コストの比率が下がる

営業利益率が高まる

という構造をつくることができます。

会社が大きくなること自体が目的ではありません。

規模が大きくなるほど、経営効率が高まる。

その構造をつくることが重要です。

私は、これを訪問看護経営における「構造的成長」だと考えています。

年商30億円を目指すなら、最初から構造を考える

年商30億円という規模の訪問看護事業を考えたとき、1拠点を経営するための仕組みを、そのまま積み上げていくだけでは難しいと思います。

  • 採用。
  • 利用者獲得。
  • 収益構造。
  • 管理者育成。
  • 2拠点目の出店。
  • 複数拠点の管理。
  • 本部機能の構築。
  • DXと業務集約。

そして、10拠点を超えた先の組織づくり。

これらを、事業が大きくなってから一つずつ考えるのではなく、

最初から一つの経営モデルとして考えていく。

私は、これが非常に重要だと思っています。

だから、これから訪問看護を起業する方には、

「まずは1拠点をつくりましょう」

だけではなく、

「その1拠点を、将来どんな会社につなげていくのか」

まで考えてほしいのです。

年商10億円を目指すのか。

20億円を目指すのか。

30億円を目指すのか。

目標とする規模は、経営者によって違って当然です。

しかし、重要なのは、規模そのものではありません。

成長したときに、会社がどういう構造になっているか。

そこを最初から考えることです。

事業所が増えるほど、利益率が高まる会社へ

例えば、拠点ごとに、

  • 請求業務を行う。
  • 採用業務を行う。
  • シフト管理を行う。
  • 総務業務を行う。

という体制をつくったとします。

拠点が増えれば、その分だけ間接業務も増えていきます。

10拠点になれば、10拠点分の間接コストが必要になるかもしれません。

これでは、規模が大きくなっても、経営効率は高まりません。

だからこそ重要なのは、

10拠点をつくる前に、共通基盤をつくることです。

例えば、請求、採用、労務、総務など、共通化できる業務を本部に集約する。

業務の進め方を標準化する。

DXを活用する。

そうすることで、拠点数が増えても、間接コストが同じ割合で増えるとは限りません。

例えば、5拠点目以降の間接コストを大きく圧縮できれば、

拠点が増える

売上が増える

共通コストの比率が下がる

営業利益率が上がる

という成長が可能になります。

これができて初めて、

「規模が大きくなるほど、利益率が高まる会社」

になるのだと思います。

第三者が評価するのは「仕組み」である

会社がある程度の規模になると、単純な売上規模だけでは、その会社の価値は測れません。

重要なのは、

営業利益率の高さ。

規模拡大に伴うコスト効率。

事業の再現性。

競争優位性。

そして、

規模が大きくなるほど利益を生み出せる仕組みがあるか。

ということです。

例えば、

「この会社は、拠点が増えるほど利益率が高まる」

「この事業モデルは、別の地域でも再現できる」

「本部機能を集約することで、拠点数が増えてもコストが膨らみにくい」

こうしたことを説明できる会社は、単純に現在の売上や利益額だけでは評価されません。

将来、どこまで成長できるのか。

成長したとき、どれだけ利益を生み出せるのか。

その可能性まで含めて、企業価値は考えられていくものだと思います。

だからこそ、将来的に大きな事業をつくりたいのであれば、

目の前の1拠点を黒字にするだけではなく、その先の企業価値まで考えて事業を設計する。

そんな視点が必要になります。

私自身の失敗からも、そう考えるようになった

私自身、訪問看護事業を経営する中で、大小さまざまな失敗も経験してきました。

拠点を増やしたことで、逆に経営が難しくなったこともあります。

人が増えれば、組織の課題も増えます。

拠点が増えれば、管理の課題も増えます。

売上が増えても、それ以上にコストが増えれば、利益は残りません。

だからこそ、

「大きくなってから考える」のではなく、最初から成長できる構造を考える。

その必要性を強く感じています。

すべてを最初から完璧につくる必要はありません。

もちろん、事業を進めながら変えていくこともあります。

しかし、少なくとも経営者として、

「この事業を将来、どういう会社にしていきたいのか」

という視点は、最初の1拠点をつくる段階から持っておくべきだと思います。

開業コンサルではなく、訪問看護を経営できる人を増やしたい

私がこれから取り組みたいのは、単に訪問看護ステーションを開業する人を増やすことではありません。

訪問看護を経営できる人を増やすことです。

  • 自分で考える。
  • 自分で決める。
  • 自分で事業を成長させる。
  • そんな経営者を増やしていきたいと思っています。
  • だから、単に、
  • 「この地域で開業するにはどうすればいいのか」
  • という話だけではありません。
  • 「この地域なら、どんな事業モデルにするのか」
  • 「どんな人を、どれくらいの規模で採用するのか」
  • 「どこまでを現場で行い、どこからを本部に集約するのか」
  • 「2拠点目を、いつ出すのか」
  • 「10拠点になったとき、どんな組織をつくるのか」

そこまで考えることが、本当の意味で訪問看護を経営するということだと思っています。

訪問看護を「開業」したい人ではなく、「経営」したい人へ

訪問看護は、人の生活を支える仕事です。

だからこそ、売上だけを大きくすればいいとは思っていません。

働く人が幸せであること。

利用者に必要とされること。

地域から信頼されること。

この3つを大切にしたい。

その結果として、10億円、20億円、30億円という規模の会社になる。

そして、その規模になっても、きちんと利益が残る。

さらに、規模が大きくなるほど、経営効率が高まっていく。

私は、これからの訪問看護経営では、そうした考え方がますます重要になると思っています。

訪問看護を「開業」する。

その先に、どんな事業をつくるのか。

最初の1拠点から、将来の成長を見据えて設計する。

そして、規模が大きくなるほど、会社が強くなっていく。

訪問看護を「開業」したい人ではなく、訪問看護を「経営」したい人へ。

1拠点をつくることをゴールにするのではなく、その1拠点から、どんな事業をつくっていくのか。

そこから考える経営者が増えてほしいと思っています。