飲食業から参入し、「人を大事にする運営」で結束と行動力を強める


うつのみや訪問看護リハビリステーションにこっと
リハビリ部部長 吉村友佑

平成27年5月に栃木県宇都宮市で訪問看護ステーションを開業された、インターネット株式会社様/うつのみや訪問看護リハビリステーションにこっと様の事例をご紹介します。リハビリ部部長の吉村友佑様にお話を伺いました。 強いリーダーシップを発揮されつつも「人を大事にする運営」で全スタッフが心を一つに活躍する環境を作られている社長様のお話などを、ご自身も誘いを受けて転職し、常勤の部長職に就いて間もない吉村様からお聞きしました。

訪問看護ステーション開業の動機を教えて下さい。

『地域の方々を助けたい、役に立ちたい。地域に恩返しがしたい。』

インターネット株式会社は、飲食業などを中心にエステティックサロンなどを含んだ様々なブランドのフランチャイザーとして、地元・宇都宮市に根ざして展開してきた会社でした。社長が独立起業してから23年が経ち、「宇都宮市に育ててもらった」という思いから地域に恩返しをしたいと考える中、出会ったビジネスが「訪問看護ステーション」でした。

インキュベクスの事業説明会を聞く機会があり、今、在宅の医療介護の需要が非常に高まっていて、希望するケアを受けられない方が地域に数多くいるという事実を知った社長は、どうにかしてそういった方々を助けたい、役に立ちたいという思いを強め、訪問看護ステーションの開業を決意したそうです。

そうした利用者の方への社長の思いが込められ、ステーションの名前は「にこっと」になりました。利用者の方はもちろん、そのご家族も、スタッフも、全員が笑顔になれるようにとの思いが込められた名前です。
笑顔に似合うさわやかなスカイブルーが、私たち「うつのみや訪問看護リハビリステーションにこっと」のイメージカラーです。
イメージカラーへのこだわりは、ロゴマークだけでなく、訪問車両であるスズキ・ハスラーのボディにも表れています。わざわざこの色を指定して新調しました。こだわりは色だけでなくナンバープレートにもあり、末尾4桁が「2510(にこっと)」。この車両以外のナンバーやその他の番号にも「2510」が多く付けられています。
こうしたちょっとしたこだわりや遊び心でも、スタッフや周りの方が「にこっと」してくれたならいいなと思います。

現在までの経緯について教えて下さい。

『なにより「知ってもらうには挨拶しかない」』

序盤の営業は、4班に分かれて毎日ケアマネージャーへ挨拶にいくなど、かなり頻繁に実施したそうです。一般的にはそれほど頻繁には営業しないと聞きますが、私たちは「仕事を受ける」ではなく「仕事をください」という立場ですし、なにより「知ってもらうには挨拶しかない」という思いで、とにかく回りました。

その結果、地域での認知も進み、依頼も伸びていったといいます。ケアマネージャーだけでなく、病院の地域連携室へも営業を行っていますが、地域連携室からケアマネージャーを紹介され、さらにケアマネから利用者を紹介されたので地域連携室にもお礼の電話を入れたところ、とても好感を持ってもらえたということがありました。
マネージャー曰く、ケアマネよりも地域連携室への営業のほうが緊張するそうですが、こうした序盤からの積み重ねがあって、ステーションへの信頼と依頼は高まっていったとのことです。営業以外にも序盤はいろいろと手探りで努力したと聞いています。
例えば、採用や人材教育についても、私自身(吉村部長)も開業の年度は非常勤で勤めて最近常勤になったばかりですが、特に序盤の教育の場面では「どこまで厳しく接するべきだろう」という戸惑いが幹部にはあったといいます。私は平成28年の4月から常勤となり、リハビリ部部長として正式に入社しました。その少し前から、ナースカンファや全体カンファ、勉強会など、スタッフ同士のミーティングや学習の場が整備され始めています。

勉強会といっても、講座形式ではなく共有会形式で、お互いが知っている知識を共有し、足りないところを補っていくスタイルで行っており、終わった後にはみんな「楽しかった」と言う堅苦しくないものです。順調なことだけではなく、困難に直面したことももちろんありました。訪問リハビリについて、ケアマネに対し宇都宮市からの指導が入り、リハビリの依頼が落ち込むことがあったのです。
この時は、私たちリハビリスタッフが自主的に、そして迅速に情報を収集して対策をまとめ、社長と協議した上で早期に方針を決定しました。迅速に対策を定め、ケアマネから質問があった場合にも自信を持って答えられるようにしたことで信頼も高まり、リハビリの依頼も回復してきています。

ステーションの現状について教えて下さい。

『良いスタッフに恵まれ、そして全員が気持ちよく働けているステーション』

今年(平成28年)4月の段階で、看護師が7名、リハビリスタッフが8名、事務担当者が1名となっています。リハビリスタッフの内訳はPT(理学療法士)が5名、OT(作業療法士)が2名、ST(言語聴覚士)が1名です。
ちなみに看護師とPT、両方の資格を持っているスタッフが1名いるので、この人数は重複してカウントしています。
開業から平成28年5月現在までの退職者は1名で、良いスタッフに恵まれ、そして全員が気持ちよく働けているステーションだと思います。現在の訪問件数は、月間約600件です。比較的短期間で成長できたのではないかと感じていますが、誰か一人がすごいわけではなく、みんなで成し遂げた結果です。

採用など人事面での取り組みについて教えて下さい。

『「まずスタッフの話を聞く」ということを最重要視しています』

私はむしろ“採用された側”ですが、社長やマネージャーのスタンスとしては、「最終的には、会社のポリシーに則れるかどうか」という点を重視しているとのことです。それをポリシーとともに直接、面談した方に伝えて、お互いに問題ない場合にのみ入社していただいています。

私もかなり熱意のあるお声がけを社長やマネージャーからいただいたのですが、とても光栄なことに私や管理者については、第一印象から人間性が会社に会うと思ってもらえたようで、「絶対に一緒に働きたい」と言っていただきました。これまでの飲食業などの中で多くのスタッフを採用・管理してきた社長やマネージャーの直感も、良いスタッフが集まる要因なのかもしれません。私も含めたスタッフの管理でマネージャーが気をつけていることは、いわゆる「報・連・相」だそうで、その中でも特に「まずスタッフの話を聞く」ということを最重要視しているといいます。

私のような部門のリーダーに対しては、何か問題が発生した時に「最大の味方になる」というスタンスでいると言ってくれており、厳しいことを言うだけではなく頼れる存在、守る役割として、社長やマネージャーが立ってくれていることが、スタッフが働きやすい環境を生み出していると思います。

入社して在宅の分野に取り組むに至った経緯を教えて下さい。

『地域のために尽くしたいという社長の思い』

私(吉村部長)は「にこっと」に入るまで、総合病院に勤めていました。
ある日、友人から「新しく開設する訪問看護ステーションで勤めてみないか?」と誘われました。友人はインターネット株式会社が運営する飲食店の店長でした。以前にちょっとだけ話しただけの、私の理学療法士の仕事を友人が覚えていてくれたことも嬉しく、また、在宅の分野に興味もあったのですが、飲食業の会社が訪問看護ステーションを運営するということに違和感を覚えてその時は断りました。しかし、友人はまた誘ってくれて、次は社長やマネージャーとも会うことになったのです。社長やマネージャーとの面談前にも、実は訪問看護ステーションについて自分で調べたりして、興味を募らせていました。詳しく聞いた条件は、リハビリ部門のリーダーとして迎えてくれるという話で、しかも、立ち上げから係わるものでした。訪問看護への興味が湧き、リーダーとして活躍したいと思っており、事業の立ち上げにも興味があった私には、これ以上ない条件にも思えましたが、何もかもが初めての話でこの時も転職を決断することができませんでした。

それでも再び、社長とマネージャーは私を誘ってくれました。3回も誘ってもらい、社長とマネージャーに2回会ったことで、地域のために尽くしたいという社長の思いが完全に伝わり、私は転職を決意しました。前の職場を急に離れられなかったこともあって最初の年は非常勤で働き始めました。病院と訪問看護ステーションには様々な違いがあります。

病院では歯車の1つとして完全に役割分担がされていて、悪く言えば「途切れた存在」でした。目の前の患者のために尽くすことだけがモチベーションで、幹部が何をしているのかもわからず、インターネット株式会社では驚かれたのですが「愛社精神」もなく、自分じゃなくても歯車は務まるんじゃないかと思っていました。

「にこっと」では内外の大勢の方と多くのつながりを強く感じています。そして、社長やマネージャーがとても近く感じられるので、自分の役割を把握し、「愛社精神」を持ちながら仕事ができています。つながりを感じたことで、「利用者のため」が「会社のため」になり、「会社のため」が「利用者のため」にもなることが理解でき、モチベーションにつながっています。年齢や経験にあまり差がないリハビリスタッフを前に、リーダーとしてどうすれば良いのか戸惑う場面もありますが、私が常勤になる前から常勤として勤めていた言わば先輩にも係わらずリーダーとして迎えてくれたメンバーに感謝しつつ、日々努力しています。

リーダーとしての仕事があるため、現場に出る訪問回数は他のメンバーより少なくなりますが、社長からは「他のスタッフから働いていないように見えることがないように気をつけなさい」と励まされているので、そうした点にも気をつけながら頑張っています。

社長様の思いや会社の雰囲気について教えて下さい。

『「サービスはテクニックではなく真心」』

社長はとにかく「人が一番大事」「人がすべてだ」「従業員を幸せにするのが経営者の仕事」
と言っており、従業員を家族のように大事に考えてくれています。従業員から社長に伺いを立てるのではなく、常に社長から身近に降りてきてくれる感じです。
フランクな関係というわけではなく、経営者と従業員というけじめはありつつも、お互いに不透明な部分が無く、すべてをさらけ出せる存在と言えます。
社長の思いは私などのリーダーだけでなく、スタッフ全員に届いています。そしてスタッフ全員が社長の思いを利用者さんに届けたい、利用者さんに社長の思いが届けば幸せになってもらえると確信して、自分たちで社長の思いを届けようという使命感を持って動いています。
全員が愛社精神を持ち、社長やマネージャーのことが本当に好きで働いています。
社長以下、マネージャー、そして管理者も、「まず動く、まず行く、まず会う」と迅速な行動を奨励する社長の方針通りに積極的な動きをしているので、他のスタッフもそれを見て続いています。
実は、企業理念に「ルールを無視しても、お客様の都合と満足に応える、あなたの判断に期待しています。」というものがあり、私はとても感銘を受けたのですが、社長は一方的に指示を出すのではなく、必ず「あなたはどうしたい?」とスタッフの意見を聞き、自分自身でお客様のために最良の判断をすることを求めます。
そして、スタッフが真剣に考えて行動した結果、問題が生じたなら、経営者としてその責任を取るという心強い姿勢で接してくれているのです。
また、「サービスはテクニックではなく真心」という信念を、社長以下スタッフ全員が持って励んでいます。これは、飲食店を含めたサービス業に長年携わってきた社長が強く抱いている信念です。

社長は「人と接する部分は、訪問看護もサービス業も同じだ」と言っています。具体的には、ご利用者様に接する時には、自分の大切な人、例えば家族や恋人、親友のように接しなさいと言います。
もちろん、病院に勤めていた時にも真心を持って、患者様を第一に考えて接してきたつもりです。しかし、どこかでテクニックや技術を頼りにしてしまっていたかもしれない、サービス業で考えるほど真心を第一にしていなかったもしれないと、社長の言葉で考えさせられました。 技術の研鑽は絶やさず、しかし、常に利用者様を大事にしたサービス提供を心掛けていきたいです。

ステーションの特徴について教えて下さい。

『信頼を築き上げようと努力している最高のチーム』

私たち「うつのみや訪問看護リハビリステーションにこっと」の特徴は、「いつでも、どこでも」訪問することです。土日を希望する非常勤スタッフも入ってきたため、土日も含めて「いつでも、どこでも」が強化されています。

また、「話をちゃんと聞く」という姿勢も特色になっています。管理者が率先して利用者さんの話を親身になって聞いているので、それが他のスタッフにも伝わり、ステーション全体に広がっています。他にも、周囲ではなかなか在宅の分野に来たがらないと聞く若いスタッフが、「にこっと」には看護師、療法士問わず、多く在籍しています。そのために考え方がより柔軟で、その点も特徴かもしれません。若いスタッフは利用者さんに喜ばれるという効果もあります。
スタッフ全員が思いを一つにして向上心を持ち、一人ひとりが会社の信用、信頼を築き上げようと努力している最高のチームです。

本業との相互作用があれば教えて下さい。

『信頼できるメンバー間の交流』

運営上で明確に意図したり意識したりしている相互作用はまったくありません。
ですが、訪問看護ステーションとその他の飲食、エステティックサロンなどの事業のメンバー間の交流はあり、みんな仲良くしています。

現在、訪問看護ステーションの事務所となっている場所が、もともと本社事務所だったことや、社長が多くの時間をステーションで過ごしていることもあって、他の事業のメンバーも頻繁にステーションに来ています。先日は全社全事業合同のバーベキューパーティーを開催し、大いに盛り上がりました。私自身、「にこっと」への転職のきっかけは、飲食業の店長をしている友人からの誘いだったので、そういった意味では全社での人的交流から人脈も含めた相互作用があると言えるかもしれません

今後の目標、抱負について教えて下さい。

『自分に出会って良かったと思ってもらうこと』

社長は常に「一番になりなさい。二番では意味がない。」と言っています。

まずは宇都宮市で一番のステーションを目指し、栃木県で一番、全国で一番と、順に達成していくことが私達の目標です。
そうして利用者さんの数が多くなれば、それだけ困っている方の力になれると考えています。私自身では、「縁」を大事にする中で「利用者さんに会うことも縁」と考えており、「自分に出会って良かったと思ってもらうこと」を最大の目標に掲げています。
一人で取り組んでいたのでは、一度に20人か30人の利用者さんとの出会いが限界ですが、みんなで取り組むことでより多くの利用者さんと出会えます。こうしたことを多くのスタッフに伝えて、多くの利用者との「縁」をつなぐために私はリーダーとなったので、今後もすべての人を幸せにするために頑張りたいと思います。

その他、何かあればお伝え下さい。

『あなたに会えて良かった、と思ってもらえる訪問看護ステーションを!』

これから訪問看護ステーションを開業する方や、初めて訪問看護ステーションに勤めるという方は、他のことでは体験しない初めてのことが多くて戸惑うことあるかもしれません。

私達は、「行動しないと動けない、始まらない、現場に行けない」と社長に励まされ、打たれても打たれてもへこたれずに努力し続けることで、前進してきました。
ぜひ、まず動く、とにかく動くという気持ちを持って行動してみてください。私たちもさらに努力し続けます。訪問看護ステーションの利用者さんに係わるということは、その方の人生に携わることに他なりません。しかも、人生の終わりに近いところで出会うサービスです。
そういった場面での出会いだからこそ、「にこっと」に出会えて良かった、あなたに会えて良かった、と思ってもらえる訪問看護ステーションを目指していきたいと思っております。