販売業から参入し、経営者自らルールづくりに尽力した事例


株式会社うろこ屋 代表取締役
八木充史

平成26年2月に神奈川県相模原市で訪問看護ステーションを開業され、経営者自らルールづくりに尽力、アットホームでフラットなステーション運営をされている、ご本業が販売業の株式会社うろこ屋様/ケアーズ訪問看護リハビリステーション橋本様の事例をご紹介します。代表取締役の八木充史様が詳しく語ってくださいました。

訪問看護ステーション開業の動機を教えて下さい。

父が脳梗塞で倒れ、母が介護をやっていたものの緑内障の手術で1週間家を空けることになってしまいました。
ヘルパーさんをよぼうとおもいま呼びましたが、父が追い返したため、自分自身で介護をしなければならず、介護の大変さやサービスの現状を知ったことで介護のビジネスに必要性を感じ、また興味を持ちました。

介護に関わるビジネスの中で、元々はリハビリやリラクゼーション、デイサービスなどの開業を検討し、リラクゼーションについては開業に至りました。検討の中でたまたまインキュベクスさんと知り合い、訪問看護ステーションを知って興味を持ち、開業を考えました。
訪問看護事業は先の長い事業だと感じたことと、元々やっていたサービス業の経験を活かせると感じたこと、そして有意義であることが、開業を決めた理由です。
他のビジネスでは「いかにお客様を呼ぶか」を考えなければなりませんが、差別化が出来ればそれが不要な訪問看護はとても面白いビジネスだと思います。

現在までの経緯について教えて下さい。

他の事業も手掛けていたため、平成26年2月のオープン時には立ち会えず、その後もあまり関わることができない時期が続きました。
開業当初の看護師は優秀な経験者でしたが、社風やその時の状況に合わなかったこともあり、2ヶ月で辞めました。当初は一般の看護師だった今の管理者が頑張ってくれたため、現在は状況が良くなっています。

管理者の頑張りだけでなく、私自身もその年の9月頃から雇用契約の見直しや職場のルールづくりなどに直接着手しました。
まず私自身で要望等をヒアリングして一つずつ、社内環境を整備し直しました。その結果、11月頃にはルールづくりが一段落し、ステーションの動きがまとまり始めました。
看護師さんは専門の技術をそれぞれ持っていますが、経営やマネジメントに長じているわけではないので、そうした点は経営者の知識が必要な場面だと思います。

私が介護ビジネスを目指したきっかけとなった父も訪問看護サービスを利用していますが、状態は当時よりもだいぶ改善し、ヘルパーさんが来るのを嫌がっていた父が、今では看護師さんが来るのを心待ちにしています。

ステーションの現状について教えて下さい。

地域の方からは最初「ヘルパーさんと一緒」というような反応がありましたが、現在はそれを払拭できていると思います。
地域の方に訪問看護がだいぶ浸透してきた一方、私たちの供給に対して需要は非常に過多な状況が続いています。その需要へと供給の体制をいかに合わせていくかが、現在の要点となっています。

インキュベクスの支援の感想を教えて下さい。

数多くの情報を得ることができ、また他の経営者さんとの交流を通してさらに多くの情報を得ることができる点が良いと思います。定期循環対応の引き合いが他のケアーズの訪問看護ステーションを介してあったこともあります。
経営者はより多くの情報を手に入れて、その情報を、会社を良い方向に導くために使うべきだと考えているので、私はインキュベクスさんの支援に限らず、様々な情報取得の機会や出会いを大切にしています。

ステーションの特徴について教えて下さい。

とてもアットホームな雰囲気のステーションとなっていると思います。現在の管理者が雰囲気づくりにいろいろと工夫を凝らしていて、昼食は毎日ピクニックをしているようでお弁当を持ち寄るなどして楽しく食べるようにしています。
社員みんなが主役であり、だからこそドラマのある日常が過ごせていると思います。私はいつも「グッとくるような仕事を」と言っていますが、それをみんなはいつも作ってくれています。

看護師さんが利用者さんのことだけしか考えなくて済む、そんなステーションを作っており、例えば、看護師さんが利用者さんの誕生日に一人一人に対してその人が「好きなもの」、花が好きな人なら花、電車が好きな人なら電車を、絵や工作などで手作りしてプレゼントしています。利用者さんは皆様喜んでくれています。

本業との相互作用があれば教えて下さい。

様々な情報を相互に事業に活かすことができています。他のケアーズの訪問看護ステーションから、別事業で扱っている24時間対応の災害時有線電話についての引き合いがあったこともあります。
また、他の事業も手掛けているため、私のスケジュールは常にオープンにしているのですが、その結果もあって気軽に声を掛けやすい雰囲気が作れていると思います。

今後の目標、抱負について教えて下さい。

ステーションの雇用と組織づくりを強化したいと考えています。
例えば、年収が700万円の看護師のいるステーションへと成長させることなどを想定しています。また、立ち上げ時のメンバーと一緒に幸せになれるように、株式を交付して利益を分配することも考えています。
現在、他の事業も含めると、ステーションがある相模原市よりも座間市などでの売り上げの方が大きい状態ですが、私自身の地元でもある相模原市での売り上げを2~3年後には大きくしていきたいとも思っています。

その他、何かあればお伝え下さい。

私は経営者として、現場に細かい指示を出すべきではないと考えています。
例えば、トップダウンの作業を行わせるよりも個々の長所や考えを最大限に生かし一つの目標に向かう仕事の出来る組織を比べたならば雲泥の差があると思います。トップダウンよりも、オープンにみんなで考えて行動する組織の方が強いと考えます。
私も経営者として狙った点は意地でも取りに行きますが、しかし、それが正しいというわけではありません。「最善は作れても最高は作れない」ということを忘れてはいけないと思います。
ケアーズ橋本には訪問用の電気自動車があり、地域の方からも大変人気ですが、この導入に当たっても随分反対されました。
誰も正解がわからない状態だったので導入を決断し、結果的に正解だったケースですが、別事業などでは従業員に失敗を指摘されて店舗を畳んだ経験もあります。

事業の成否を分けるのは、情報の量だと考えますし、経営者はそのためにとにかく常に新しい情報を大量に入手する必要があると思います。
感覚で良し悪しを判断するのではなく、良し悪しも情報の量で判断することで、成功の確率を上げることができます。