インキュベクスの上村です。

訪問看護ステーション経営は、長く勤めてくれる看護師さんの採用がすべてといえます。

今日は私達の直営する訪問看護ステーションの面接の際に確認するいくつかの“投げかけ”をご紹介します。

様々な質問を通して、その方の人間性や癖を把握することで採用の後にひと悶着ありそうなナースの採用を回避する必要があります。

訪問看護ステーションは採用がすべて!

キャリアが素晴らしくて、発言はキレキレでも退職件数の多い方は避けたいものです。

また意見や批評はすごいけれど、まったく動かないナースが結構いるものです。

訪問看護ステーションにおけるナースの面接は、そう簡単ではありません。

そのステーションの目指すところとマッチしたナースを採用しなければならないからです。

だいたい、5人会って1人採用。あるいは10名面接して1人採用するくらいのペースとなる場合もあります。

そのナースは採用してはいけません!?

ナースの採用面接のときに質問するのは、次のようなことです。

1)「訪問看護ステーションへの勤務に興味をもったきっかけは?」

訪問看護は、病棟の看護師以上に、利用者様一人ひとりと時間をかけて向き合う仕事。

それを理由に、訪問看護を希望する人も多いです。

出来れば「在宅看護、訪問看護が好きで好きで仕方ない」、そんな方を採用したいもの。

訪問看護ステーションは未経験ながら「やる気はあります」という方も多数いらっしゃいます。

しかし、訪問看護ステーションではまれにゴミ屋敷のような個人宅への訪問や、緊急対応、看取りの必要等も発生する場合があります。

心身ともにタフさが必要です。

訪問看護ステーション未経験者が退職する理由の1つに「訪問看護は自分が考えていた仕事と違った」という声も多く聞かれます。

2)「前職でつらかったことを教えてください」

圧迫面接ではありません。あくまで「何がつらかったか?」をうかがうだけなんですが、まずは職場環境の問題、そして夜勤など時間拘束の問題、そして人間関係、上司の悪口etc。

最終的には前職の悪口のオンパレードのようになる方もいらっしゃいます。

これまでの私の経験では、この手の方はケアマネ事務所や医療連携先への負の影響を与えることがあるようです。

前職で理不尽な思いをしたのは事実であっても、冷静さを欠いて人の悪口を並べるナースは要注意です。

3)「経済的な報酬がどれくらいあれば、つらい仕事に耐えられますか?」

ケアーズでは訪問看護ステーションに勤務する看護師報酬を、相場以上に設定しています。

数多くのステーションではキャリア、年齢、経験ではなく、訪問件数に比重を置いた報酬制度を敷いているところもあります。

訪問看護に勤務するナースは、研修終了後は原則1人で行動する孤独ともいえる環境。

病棟とは全く異なる働き方なのです。

この質問を通して、在宅が好きな看護師、お金以上の価値を仕事に見出したいと考える
ナースを採用したいと考えているのです。

4)「訪問看護ステーション勤務を通じてどんな社会貢献をお考えですか?」

訪問看護ステーション経営は人がすべて。つまりは採用がすべてです。

私の経験値から言うならば、短期間で辞めてしまう人よりも、5年~10年先にも継続して勤務していただけるナースの採用を心がけたいものです。

最近では人材紹介会社等を利用する場合もあります。

5年~10年継続してくれるナースは、正直、お金をかけても採用したいものです。

「訪問看護ステーション勤務を通じてどんな社会貢献をお考えですか?」への、上手な受け答えを求めているわけではありません。

長く続けてくれるようなまじめで責任感のある方、もちろん在宅看護が大好きな方を見つけ出したいのです。

5)「会社のHPに顔写真は載せてもよろしいですか?」

長い間ナースとの面接をやっていると、自社のHPに顔写真はNGというナースにお会いすることがあります。

結論から申し上げると、退職率99.9%と申し上げていいかもしれません。

研修期間だけを繰り返し、いろいろな事業所を渡り歩くナースもいるようです。

6)「これから10年、20年でどんな未来を切り拓きたいですか?」

私の感覚としては、この質問に明確に応えられる方は10名中、1~2人。

特に男性は、この将来を見据えたキャリアプランをお考えの方が多いようです。

一方、女性であっても将来起業を目指すようなタイプ、あるいは管理者を目指すような方については5年単位のキャリア形成をされていることも珍しくありません。

将来、起業を目指すナースを採用したことがあります。
残念ながら大病を患い退職にはなりましたが、夢をもっていた方の仕事へのこだわりは、ハイレベルなものです。

僕がその方にして差し上げあげられたのは、仕事に取り組むプロセスを応援することだけでした。

お陰様ですごくステーションの売上が伸びました。

7)「自分のキャリア、好きなことと訪問看護をどのように組み合わせられますか?」

これも正解の答えはありません。その人がこれまでナースとして経験してきたこと、学んだことを振り返り、訪問看護にどんなふうに活かしたいのか、それをお聞きしたいのです。

誤解を恐れずに言えば、訪問看護ステーションにおけるナース面接は、断るための作業。

つまり、5人会って1人採用。あるいは10人面接して1人採用するくらいの確率です。

様々な質問を通して、その方の人間性や癖を把握することで、一緒に働く人やご利用者様とトラブルを起こさず、長続きするナースを見出すことが求められます。

訪問看護ステーションにもいろいろなカラーがあり、ナースもいろいろな方がいます。

看護の技術だけでは採用を決められません。

あくまでも自社の方向性に則した人間性を持ち合わせた方を採用したいのです。


上村 隆幸(かみむら たかゆき)

1965年神奈川県生まれ。1998年、起業コンサルタント業を開始し、以来3000社を超える起業支援を手がける。日本の医療のが在宅シフトにともない「子供からお年寄りまで」すべての生活者が安心と幸福を実感できる地域社会づくりに向けて「ケアーズ訪問看護ステーション開業運営支援」を開始し現在全国800社以上をネットワーク。また「介護の王国」では食費を含めた¥95.000を関東圏で実現する。こちらは全国70拠店。

2021年より神奈川県南足柄市で農業生活をスタート。生産者の視点で「農のある暮らし」「農のある医療」「農のある介護施設」づくりを推進している。

青山学院大学 大学院 国際マネジメント研究科 MBA
産業技術大学院大学(AIIT)創造技術専攻 事業アーキテクチャ(修士)
国際医療福祉大学大学院 保健医療学 博士課程(中退)
新極真空手 木元道場所属 初段