リアルな惨状を経験したことで、複合的な地域への貢献を模索。訪問看護と住宅提供や宅食等、さまざまなサービスを、同一会社で!

――経営者として考え抜くというか。田村社長は本当にいろいろと複合的に考えておられますね。

これから、医療依存度の高い方が増えてくる現実が迫っています。

訪問看護ステーションがこの先、もっと求められてくると思われますが、今後の展望的なところをどうお考えなのか、少し聞かせていただいてよろしいですか。


田村:僕らが訪問看護をやっていく中で、実際にこのままだと、介護医療制度や年金が破綻するという危機感は当然あります。

これから個人負担がどんどん増えていく。この先お金が無い高齢者が増えていくのは見えているんです。もっとコンパクトに、安価にしていくことはできないのか。

関わる人件費を下げていくのも、給与を減らすのではなく、携わる職務の範囲を変えていくことはできないか。元々看護師しかできないことをヘルパーが担当するとか。

とにかく全体としてコンパクトに動きやすくなっていかなきゃいけないっていうところを、管理者とも共通認識でずっと、話し合っていましたね。

実は僕、「あぁ、これが現実なんだ」ってもの凄く刺激を受けた体験があって。ある日曜日に、管理者から電話が入ったんです。

どうしたのって電話に出たら、「社長、今すぐに、葛原にある○○さんのお宅に行ってもらえませんか」って。利用者ご本人様がもうお看取りで、本当は自分が行かないといけないのだけれど、別のお宅の訪問で行けないから、どうにか社長にすぐに行ってもらいたいって。

それで僕はすぐにステーションに戻って、利用者さんのカルテを見て、そのお宅に行ったわけです。行ったときにはもう往診の先生もいらっしゃっていました。

はっきり言うとお家の中は汚くて・・・誰も周りにいないうちに、寂しい思いをしてお亡くなりになったんでしょうね。ご遺体は固まって、膝が曲がってがりがりに痩せていました。

遠方にお住まいのお兄さんのご友人が近所にいらっしゃって、その方がお金を管理して助けてくれてたって話だったんですけど。結局、数日前にはあった現金も、ご友人が訪問しない3日の間に無くなっていた。配食サービスも入っていたらしいんですが、いつ、誰が家に入って、誰がどうしたのか、責任の所在が全くはっきりしないんです。

僕ね、そのとき、囲い込みじゃないけど・・・ひとつの事業者が一括してご利用者様を把握してサービス提供をした方がいいんじゃないかって痛感したんです。そうすれば、最後まで事業者が対応できる。責任の所在もはっきりするし、安心してもらえるんじゃないかなって思ったんですね。

そのためには訪問看護だけではなく施設、訪問介護、配食、全部やる。それでサ高住を実は考えたことがあります。ところが、6億、7億かかるんです。

それはできない・・・大きな負担になっちゃうし、先々の経済状況を考えたら、この事業モデルは無理。でも何か無いか。そう思っていたところで、御社の「介護の王国」。これはいいビジネスモデルだというのを感じましたね。



――リアルな惨状を目の当たりにした体験から、施設運営にも今、目が向いておられるのですね。

まず訪問看護ステーション運営でしっかり仕組みを作り地域に根付き、医療的ケアを自社でできるようになれば、その後は田村社長が仰ったように、同一法人内で配食、訪問介護、住宅型サービスまでの事業拡大も見込めますね。

訪問看護ステーションを持たずに介護事業を運営しても、医療的な部分が不足してしまいますから。我々、自分たちでも直営施設を今運営しておりますが、これまで気づかなかった色々な課題、医療的ケア技術の必要性をリアルに実感しているところです。


田村:そうですね。


訪問看護ステーション経営を考えておられる方へ――事業の成功の根底にあるのは「人」である。


――最後に、訪問看護事業にご興味をお持ちの方、並行事業として考えておられる方、開業間近の方、また開業したての方、開業1年目で苦労されている方等……それぞれの方に対してメッセージをいただいてよろしいですか。


田村:訪問看護ステーションは事業なので、経営者として経営目線は勿論必要です。が、僕自身のそもそもの考え方として、「儲かる」「利益」ということばかり考えていると、難しいのではないかと思っています。

業界的に将来性はあると思いますし、事業としても発展性はあると思うんですが、訪問看護事業は「医療」であり「地域貢献」が柱なので、儲かる儲からないという視点ではなく、正しいか正しくないかという目線を、しっかりもって運営するほうがいいんじゃないかなと僕は思いますね。


――地域密着型、地域の方に対するサービスは自動車学校も訪問看護ステーションも同じですよね。そこがこの事業の魅力のひとつかなと思っているのですが。


田村:その通りです。弊社も、地域の方に向けてのサービスは、事業展開の中でも基本路線として常に重点を置いて考えていますね。業種としてなくならない三業種と言われるのは、農業と医療と教育です。「人」に関わるサービスは、なくなることはありません。

先程も言いましたが、最終的に地域や地域の人々にとって「正しいか、正しくないか」という判断の元で続けていけば、永続できると思っています。


――ありがとうございます。

あと、1年目は社長も苦労されたという経緯をお話いただきましたが、どう事業を、人員配置を、スムーズな運営を組み立てていくかという部分について・・・まさに今、採用や営業等で苦戦している経営者の方に対して、リアルなアドバイスをいただければ。


田村:やっぱり最後は「人」です。そこをマネジメントというか、いかにしっかりスタッフの満足度を上げていけるかというところが、一番大事だと思いますね。

僕ら経営者は、訪問看護の現場で仕事はできないんです。現場スタッフに任せていくしかないですから。看護師さんは専門職で、ほとんどの方、大きい病院に勤めてきた看護師さんは、お金は天から降ってくると思ってる(笑)。

会社に属したことがない、会社という組織の中では仕事したことがない方が多いはずなんです。そうすると、会社の売上とか利益っていうところで、金銭的な数字を嫌うというか「利益なんて出しちゃいけない」という感覚がとても強い方が多い。そこを無理に上から、自分は経営者だから看護師の考え方を変えてやろう、こうじゃなきゃいけないって、言ったら反発されるだけです。

それぞれの生きてきた道、考え方があるから当然です。基本的には相手の考えを受容する。自分の考えを押し付けるのではなく相手の考えを聞く。否定じゃなく、肯定もしない。そうだよねって全部聞くんです。そのうえで時間をかけて、経営者としての僕の考えを説明します。

そうやって一歩一歩を積み重ねて、お互いに歩み寄って、今の僕らのステーションがあると思っています。何か参考になれば嬉しいです。


――本日はありがとうございました。


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